ご支援下さる皆様へ

白血病の治療は着実に前進してきたことを実感できるようになりましたが、この発展の基には基礎的研究の下支えがあったことを改めて認識するに至りました。 その基礎的研究も研究技術の向上により、より生体内に近い反応を直接観察できる時代になったことをお教え頂きました。 白血病撲滅は、決して夢ではなく現実の目標であることの認識を深めることが出来ました。

2019/0905
受賞者からの声 国立がん研究センター研究所 分子腫瘍学分野 分野長 片岡圭亮先生

国立がん研究センター研究所 分子腫瘍学分野 分野長 片岡 圭亮先生は、「免疫関連ゲノム異常が腫傷微小環境に与える影響の解明」を研究テーマとして平成30年度日本白血病研究基金の荻村孝特別研究賞を受賞されました。 片岡先生は、平成24年度にも「造血および白血病幹細胞ニッチの構造の解明」をテーマとして日本白血病研究基金の一般研究賞も受賞されています。

聴き手:小川 公明 (NPO法人 白血病研究基金を育てる会)

―受賞テーマについて解説頂いた―

片岡先生が研究しているテーマは、昨年ノーベル賞を受賞された本庶佑先生の研究とつながりがありました。本庶先生のがん免疫療法の要点は

① がん細胞の表面にPD-L1と呼ばれる物質(リガンド)が活性化する。
② 免疫細胞表面には、がん細胞のPD-L1と選択的に結合するPD-1と呼ばれる物質(受容体)が存在します。
③ PD-L1とPD-1が結合すると、免疫細胞の活性が抑制されます。 このような仕組みでがん細胞は免疫細胞に排除されずに、増殖します。
④ 本庶先生の発見は、このPD-L1とPD-1が結合をブロックすることにより、免疫細胞の活性が抑制されず、がん細胞を排除できることでした。

ではなぜ、がん細胞にPD-L1が活性化するのか?この課題を突き止めたのが片岡先生の以前の研究です。具体的には、PD-L1が活性化する機序はがん細胞の特定の遺伝子に異常があることを、発見しました。
今回の受賞テーマの「免疫関連ゲノム異常」はこのことを表現しています。\また「腫傷微小環境」とは、がん細胞と周囲の免疫細胞の相互の関連性であり、免疫反応の最前線で何が起きているかを精密に正確に突き止めることを目標にしました。この研究により、より適切な治療薬の選択、治療開始のより適切な時期、などがわかることにより確実な治療を実現したいと考えています。

―研究を支えた技術とは―

今回の研究は現在になって初めて可能になりました。以前の研究は、生体としてのマウスや、ヒトがん細胞由来の培養細胞を対象として発展してきました。しかし、ヒトでないことや、培養することにより、必ずしも、ヒトの生体内反応を正しく反映しているとは、言い難い状況がありました。しかし、最近になって、NGS(次世代シーケンサー)が実用化され、直接ヒト(患者)細胞を遺伝子のレベルで高精度に観察することが可能になってきました。免疫反応の仕組みを遺伝子レベルで解明していく方法を手にできたと考えられます。

―血液内科臨床医から基礎研究者に―

私は、もちもと、臨床現場で患者主治医として治療に従事していました。血液内科医当時、多数の患者さんを受け持っていたこともありましたが、特に若い患者さんが治療のすべてを費やしても、甲斐なく亡くなることに立ち会うこともあり、若い方に将来(人生)を与えてあげられなかったことに、悔しさを覚えました。その時期も臨床の合間を見つけながらマウスを用いた基礎研究は行っていました。しかし、このころの研究(マウス)では治療に役立てるのは距離が大きかったです。その後、研究に対するより高い技術を身に付ける機会に恵まれました。そして、患者さんが治療の甲斐なく亡くなることを経験した悔しさから、より、確実な治療を実現するために、基礎研究に全力を尽くす決意を固め、研究に専念できる環境に身をおかしていただくことにしました。

―感謝の気持ち―

今回は、最高賞である、荻村孝特別賞を頂けたことは、まだ若い私にとって、選んで頂けたことに驚きと、喜びを感じます。またこのような賞を得られたことで、研究者としての信頼が高まることが今後の私の研究に大いに役立つと思います。受賞の研究は、対象として患者さんの細胞が必要となりますので、臨床の先生方に協力をお願いすることが多いのですが、このようなときに、荻村孝特別賞、受賞者であることが、強力な追い風になると思います。日本白血病研究基金を育んで下さった市民の方々のご支援は貴重な真心と思います。心より感謝申し上げます。

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