藤田保健衛生大学医学部 血液内科学教室 臨床教授 赤塚 美樹 先生は、「ハイリスク造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植後の再発の予防と治療を目標に、選択的移植片対白血病(GVL)効果を誘導するマイナー組織適合性抗原を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子導入したT細胞養子免疫療法を開発する」をテーマとして、平成25年度の日本白血病研究基金清水賞を受賞された。 赤塚先生は、平成16年度にも、「同種造血細胞移植後に再発する、ハイリスク造血器腫瘍に対する免疫療法の確立」日本白血病研究基金一般研究賞を受賞されており、一貫してハイリスク造血器腫瘍の治療研究に従事されております。
聴き手:小川 公明 (NPO法人 白血病研究基金を育てる会)
患者さんを苦しめるGVHDを防ぎ、かつ、再発を抑えるGVLを誘導するための基礎―臨床に繋げる研究がテーマです。
血液細胞にだけ発現しているタンパク質を標的抗原にすることでGVHDが防げます。ドナーにはなくて患者さんには発現しているタンパク質、なおかつ体の細胞にはなくて血液の細胞だけで発現しているタンパク質に注目しました。
血液細胞にしか発現していないタンパク質にあるドナー・患者間の個人差(=アミノ酸多型)部分がマイナー抗原となって、特にHLA一致移植ではキラーT細胞(CTL)の標的となっています。 これをターゲットにすれば、患者さんの白血病細胞だけを攻撃することができる。
このような能力を与えた細胞を体外で増やして患者さんに戻せば、GVHDを伴わず強いGVLが期待でき白血病の再発を防ぐことができます。
動物実験では、こうしたCTLが有効であるとの確証を得ていますので、ヒトの治療へ応用を実現するための改良や、安全性などの課題を克服すべく努力しています。
過去にGVHDで苦しまれた沢山の患者さんを診てきました。また再発で苦しむ患者さんも沢山おられました。 当時患者さんを救うため、再発してしまう前に、なんとか予防が出来ないかとの問題意識を持ち、海外の論文を調べていました。
その中で、1993年にオランダのライデン大学でマイナー抗原が発見された論文を見つけて興味をもちました。 GVHDに苦しむことなく再発を防ぐ可能性が見えてきました。 そこで、マイナー抗原と骨髄移植の研究を目的に、骨髄移植では世界的権威でありノーベル医学生理学賞受賞のトーマス先生が在籍されている米国シアトルにあるフレッドハッチンソンがん研究所に留学しました。
マイナー抗原はHLAと強く関係することが知られていました。 日本人と欧米人はHLAが異なるため、日本人に可能なマイナー抗原を探すことがそこで頂いた私のテーマでした。 それ以来、一貫して、この研究を続けていました。
患者さんやご家族の悔しい気持ちが集まった寄付から2回も受賞させて頂いたことを誠に光栄に思い、心より感謝申し上げます。
特に、今回受賞した、清水賞の由縁、つまり、白血病で家族を亡くされた方々の白血病撲滅への強い思いを知り、これからも生涯かけてよりよい治療法を世に出して行きたいとの想いをさらに強めました。
*研究者の絶え間ない、白血病撲滅の想いに触れることができた。
市民が支える研究支援の重要性そして有用性を改めて感じることができた。*