受賞者からの声│大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学教授 杉山治夫先生2014/02/28

白血病の根治療法、さらに予防ワクチン接種による白血病撲滅への道が見えてきた。
希望を持ち続けて病と闘ってほしい。

*大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学教授 杉山治夫先生は、「WT1 assayによる白血病の微小残存病変の検出法の確立とそれを用いた新しい白血病治療法の開発」をテーマとして、平成8 年度の日本白血病研究基金荻村孝特別賞を受賞された。 杉山治夫先生に研究の具体的成果を伺った。
聞き手:小川 公明(NPO法人 白血病研究基金を育てる会)


杉山 治夫 先生

ー受賞テーマについて解説頂いた。

「WT1と言うタンパクが白血病細胞に高発現する事に着目し、白血病治療後も生体内にわずかに残存する白血病細胞を、WT1をマーカーとして逸早く認識し、白血病の再発を早期に把握する検査法を1992年に世界に先駆けて発見されました。  しかし、はじめはこの事を否定する論文も多く順風なスタートではありませんでした。 その様な状況でも私は患者さんにWT1タンパクを接種することにより白血病の治療が出来るのではないかと思い研究テーマを作り日本白血病研究基金に応募しました。」

「当時は疑問を持たれる先生方も多い中で、日本白血病研究基金の運営委員の先生方は、私を信じて下さった。 本当にありがたいことです。 その時の研究助成金により国際学会などで発表の機会が作れました。 おかげで、世界中の医療関係者から信じてもらえるようになり、2004年にはWT1国際会議を立ち上げ世界中に仲間を作ることが出来ました。」

ー受賞テーマは現在どのようなレベルに達していますか?

「WT1 による白血病の微小残存病変の検出法は、すでに大手製薬企業から販売されすでに保険適用されており、欧米でも広がっており、治療方針を考える上で重要な指標に位置づけられています。」

ツベルクリン検査の様な赤斑が現れる写真を見せて頂いた。この赤斑が強く表れるヒトほど効き目が早いとのこと。

「WT1を用いた白血病治療法は、WT1と言うタンパクでヒトの免疫機構に認識しやすい部分だけを切り出したペプチドを、患者さんの皮下に注射します。  すると、患者さんは、WT1を識別しWT1を表面に持っている白血病細胞を攻撃できるキラー細胞が増えて白血病細胞を体から駆逐していきます。 これがWT1ペプチドワクチン療法です。」

この療法は、大手製薬企業において、製品化に向けた治験が日本、米国、アジアで進んでいます。

ー白血病の根治療法とお考えの根拠は何でしょうか?

「WT1ペプチドワクチン療法の治療研究で分かってきた事ですが、患者さん達の再発を防ぐ効果が見えてきました。 がんの研究で明らかになったようで白血病にも、病気の元となる白血病幹細胞が存在します。 この白血病幹細胞を無くすことがこれまでの治療だと難しいため、白血病の再発が存在します。 白血病幹細胞はWT1を表面に持っているためWT1ペプチドワクチン療法で駆逐することが出来ます。 つまり病気の根を断つ事が出来そうだと言うことです。」

ーすばらしい治療法ですが副作用等はありませんか?

「がんに対する免疫力を高める事が主眼のため、これまで、大きな副作用の報告はないようです、抗ガン剤等と併用してもその効果を下げることは無いようです。」

「しかし、効果の現れ方は、個人差があります。 免疫力の強弱が背景にあるようです。 例えば骨髄移植後の患者さんにWT1ペプチドワクチン療法を行うと非常に成績が良くなることが分かってきました。」 

ー今後、研究の方向性をどのようにお考えですか。

「研究の初期は、難治性の患者さんにWT1ペプチドワクチン療法を試しました。 悪化することがなかったので、徐々に治療の初期に近づけました。 するとより効果が表れました。 白血病と診断されれば直ちにWT1ペプチドワクチンを投与する時代が来るように思います。」

「WT1は、白血病以外にも殆どのがん細胞が表面に持っており、WT1ペプチドワクチン療法の効果も得られています。 」

「将来は、がん予防免疫として、国民全員が満○○歳の誕生日にWT1ペプチドワクチンを接種する。 このような体制を作れば白血病やがんの撲滅は夢ではなく、ヒトの寿命が延びるのではと思います。」

ー患者さん、市民の方へ

「治療法は急速に進んでいます。 必ず特効薬が見つかります。 我々、研究者も努力していますので患者さんは希望を持ち続けていて下さい。」

「患者さんの希望を、少しでも早くかなえるために、一人でも多くの市民の方々に日本白血病研究基金へのご支援をお願い申し上げます。」


WT1国際会議で重鎮として活躍中の杉山 治夫 先生

白血病撲滅の夢の実現には幾つもの道筋があると思いますが、取材をおえもう夢ではない、叶えうる課題であることを確信した。

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